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福井地方裁判所 昭和61年(行ウ)3号 判決 1991年12月13日

福井県鯖江市北中町二〇番一四号

原告

塚田信一

右訴訟代理人弁護士

吉村悟

福井県武生市中央一丁目六番一二号

被告

武生税務署長 光井正彦

右指定代理人

長谷川恭弘

山下純

西口武千代

小中敞次

永井良治

阿津川喜代士

木村亘

有澤勇一

主文

一  被告が昭和五八年一一月九日付けでした次の処分を取り消す。

1  原告の昭和五五年分の所得金額を二一二六万一〇〇〇円とする更正及び過少申告加算税賦課決定のうち、所得金額を四四四万〇八九一円として計算した額を超える部分

2  原告の昭和五六年分の所得金額を二二六一万三〇〇〇円とする更正及び過少申告加算税賦課決定のうち、所得金額を三七二万九五三三円として計算した額を超える部分

3  原告の昭和五七年分の所得金額を二三五九万七二六七円とする更正及び過少申告加算税賦課決定のうち、所得金額を四五〇万五六六九円として計算した額を超える部分

二  訴訟費用は被告の負担とする。

事実及び理由

第一請求

主文同旨

第二事案の概要

一  本件課税処分及び不服申立ての経緯(争いのない事実)

別表「課税処分等の経緯」記載のとおり

二  争点

1  被告の主張(課税内容)

(一) 総収入金額

総収入金額は、取引先の調査による取引実績に基づく金額(別表一)と取引金融機関の調査による預金口座入金状況からの推認金額(別表二の(一)から(三))の合計額であり、

昭和五五年分 一億六〇三一万三八六三円

昭和五六年分 一億七八一六万二七四六円

昭和五七年分 一億七五一四万六五一〇円

となる。

(二) 必要経費額

必要経費額は、税務調査について原告の協力が得られなかったことから、原告の類似同業者として武生税務署管内の漆器製造卸売業者を選定してその必要経費率の平均値(別表三の(一)から(三))を求め、前記総収入金額に右平均必要経費率を乗じて推計したものであり、

昭和五五年分 一億三六六九万九六三一円

昭和五六年分 一億五三三二万六八六〇円

昭和五七年分 一億四八一〇万三八八九円

となる。

(三) 事業専従者控除額は、原告の妻塚田美智子(昭和五五から五七年分)並びに両親塚田与三右ヱ門及び塚田敏子(昭和五七年分)についてであり、原告の申告額(各四〇万円)に基づき、

昭和五五年分 四〇万円

昭和五六年分 四〇万円

昭和五七年分 一二〇万円

と算定した。

(四) 営業所得金額

営業所得金額は、右総収入金額から必要経費額及び事業専従者控除額を控除したものであり、

昭和五五年分 二三二一万四二三二円

昭和五六年分 二四四三万五八八六円

昭和五七年分 二五八四万二六二一円

となる。

2  原告の主張

(一) 総収入金額

取引先の調査による取引実績に基づく金額(別表一)は認め、その余は否認する。

(二) 必要経費額

1  推計課税の必要性、合理性は争う。

特に、原告の営業は漆器卸売業であって漆器製造卸売業ではなく、選定業者は同酒類業者とはいえない。

2  必要経費額の実額は、別表1から3記載のとおりである。

(三) 事業専従者控除額

認める。

(四) 営業所得金額

争う。

第三争点に対する判断

必要経費額の推計の合理性について検討するに、被告が選定した業者はすべて漆器製造卸売業者であり、右にいう製造卸売業とは原材料を自己持ちで製品を製造して卸売りをする業務を意味する。一方、原告は、便利屋と称して業者間における漆器の販売を営んでおり、右営業は業種としては卸売業に相当する。右製造卸売業と卸売業とでは業種形態が異なり、それゆえ必要経費率も異なるものである(甲四四三から四四六、乙一、四から六、八から一三、証人田中信太郎、同倉橋日出夫)。

従って、被告が選定した業者は原告の類似同業者とはいえず、被告の必要経費額の推計には合理性がない。

ところで、課税処分の基礎となる営業所得金額の算定にあたって必要経費額の確定は不可欠であり、また、通常収入を得るためには経費が伴うものであるから、総収入金額から控除すべき必要経費額が一定額を超えて存しないことについて課税処分の適法要件として被告が立証責任を負っているところ、前記認定のとおり、被告主張の必要経費額の推計には合理性がないから、被告の立証責任は果たされておらず、本件課税処分は違法といわざるを得ない。

よって、その余の点について判断するまでもなく原告の請求は理由がある。

(裁判長裁判官 猪瀬俊雄 裁判官 林正彦 裁判官 村野裕二)

別表 「課税処分等の経緯」

<省略>

別表一

取引先別収入金額内訳表

<省略>

別表二の(一)

総入金額等の預金口座別内訳表(昭和55年分)

<省略>

別表二の(二)

総入金額等の預金口座別内訳表(昭和56年分)

<省略>

別表二の(三)

総入金額等の預金口座別内訳表(昭和57年分)

<省略>

別表三の(一)

必要経費率の計算表(昭和55年分)

<省略>

別表三の(二)

必要経費率の計算表(昭和56年分)

<省略>

別表三の(三)

必要経費率の計算表(昭和57年分)

<省略>

〔別表2〕

56年分

<省略>

〔別表1〕

55年分

<省略>

〔別表3〕

57年分

<省略>

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